コロナ禍を経て、富裕層に分類される世帯数が大きく増加
2023.03.13
3月1日、野村総合研究所は2021年の日本における「純金融資産(*1)保有額別の世帯数と資産規模」の推計結果を公表しました。本推計はピラミッド構造で富裕層の世帯数を示した図として多くの場面で引用されていますので、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。2005年以降2年毎に公表されており、前回の推計はコロナ前の2019年ですので、コロナ禍で富裕層の世帯数・資産規模にどのように変化があったのか見てみたいと思います。
2019年
超富裕層(5億円以上) 97兆円(8.7万世帯)
富裕層(1億円以上5億円未満) 236兆円(124万世帯)
増減 + 8兆円(+0.3万世帯)
2021年
超富裕層(5億円以上) 105兆円(9.0万世帯)
富裕層(1億円以上5億円未満) 259兆円(139.5万世帯)
増減 +23兆円(+15.5万世帯)
2021年の富裕層・超富裕層の合計世帯数は、この推計を開始した2005年以降、最も多かった2019年から更に15.8万世帯増加しました。富裕層・超富裕層の世帯数はいずれも、アベノミクス・黒田異次元緩和が始まった2013年以降、一貫して増加を続けています。今回の推計では、資産1億円以上5億円未満に分類される「富裕層」の世帯数増加(+15.5万世帯)がとりわけ目立っています。これは、コロナ禍で株式などの金融資産価格が上昇したことによって、金融資産を運用している準富裕層が富裕層に移行してきたためと推察できます。
なお、本推計は純金融資産を推計したものでありますが、コロナ禍を経て不動産価格も総じて上昇しておりますので、金融資産のみならず、不動産資産を有している世帯の資産規模も拡大していることが推測されます。
本年4月からは新たな日銀総裁として植田氏が金融政策の舵取りを担うこととなり、10年続いた黒田総裁による金融緩和の出口戦略を見出すことが期待されています。植田新総裁の金融政策が、次回2年後に公表される富裕層ピラミッドにどのような影響を与えるのか要注目です。
※1 預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた金額