生成AIは不動産業界をどのように変えるか

2023.05.15

ここ最近、毎日のようにテレビや新聞・雑誌でChatGPTに代表される「生成AI」という言葉を耳にします。ChatGPTや生成AIがどういうもので、現在及び今後、不動産業界にどのような影響を与える可能性があるのか考えてみたいと思います。

まずChatGPTですが、これは人口知能の研究開発機関であるOpenAI(*1)により開発されたオリジナルの文章を生成することができる人工知能ツールです。なぜこれほど騒がれているかと言いますと、ChatGPTがまるで人間が書いたと思うような自然な文章を極めて速いスピードで作成するためです。今日の生成AIはChatGPTのように文章作成だけでなく、画像、音声、プログラムコードなど様々なコンテンツを極めて高い精度で生成することが可能になりつつあります。

では、こうした生成AIが現在及び今後、不動産業界の仕事にどのような影響を与えるのでしょうか。例えば、生成AIによって作成した文章をソーシャルメディアで自動配信することによって不動産取引を促すことが既に行われています。また、物件の写真や立地などの情報を生成AIに読み込ませることで、物件の特徴を記述した物件概要書を素早く作成させることも可能となっています。現段階では、人間の手を介した最終的な微調整が必要となるかもしれませんが、近い将来、こうした仕事は人間の手を介することなく生成AIが担うようになることはほぼ間違いないかと思います。

こうして聞くと、不動産業界で働く人間の仕事が生成AIに奪われてしまうのではないかという不安が頭に浮かんでくるかもしれませんが、今のところ、答えは「NO」と思われます。生成AIでは対象となる不動産に関して「個々人の生活スタイルにフィットする立地であるか否か」や「地位(ジグライ)」のような不動産価値を伝えることは出来ず、不安や躊躇いを感じている不動産取引検討者に対して取引を決断させる最後の一押しが足りないと考えられるためです。このように考えると生成AIは不動産業界で働く人間の仕事を奪うものではなく、人間が行う仕事を省力化し、より良い仕事・取引に繋げるためのサポート役的な存在と捉えるのが自然かと思われます。今後、生成AIが不動産業界の中で、どのような使われ方をしていくのか楽しみなところです。

*1 2015年12月に設立された、AIを研究し、活用可能なAIを提供するアメリカの非営利団体。