米シリコンバレー銀行破綻の背景と、日本の金融政策の見通し

2023.03.27

3月10日、資産規模で全米16位を誇るシリコンバレーバンク(以下「SVB」/本社カリフォルニア州)が破綻しました。バイデン米大統領は「預金全額保護」の特例措置を講じ、金融システム不安の連鎖を引き起こさない強い姿勢を示しました。ここではSVBが破綻に至った背景と、この破綻が示唆する日本の金融政策の見通しについて考えてみたいと思います。

SVBが預かっていた預金はIT系のスタートアップ企業等の法人顧客が中心でした。また、SVBは預貸率(*1)が43%と低く(*2)、米国債等での運用比率が高かったため金利上昇の影響を受けやすい構造で、2022年3月からFRBが進めた利上げによって、債券の含み損が拡大している状況でした(*3)。債券は含み損を抱えていても売却をしない限り満期に額面で償還されますが、今般、SVBの経営を懸念した法人顧客が多額の預金引き出しを行ったため、SVBは含み損を抱えた債券を売却せざるを得えず破綻に至ったというのが背景であります。

今回の破綻はSVBの構造に起因した固有の問題であり、金融システムの連鎖倒産を引き起こす可能性が低いと思われるものの、金融システムを巡る不安はもう暫く続くものと考えられます。

では次に、SVBの破綻が示唆する日本の金融政策の見通しを考えてみたいと思います。日本でも地方銀行を中心として、保有する日本国債等の含み損が拡大しています。日本経済新聞(2023年2月14日付)によりますと、地方銀行が保有する国内債の含み損は2022年9月末時点:▲0.6兆円から2022年12月末時点:▲1.4兆円に3カ月で倍増しています(*4)。これは日銀が2022年12月に0.25%から0.50%に長期金利の引き上げを実施(債券価格は下落)した影響によるものです。

国内銀行の預貸率は70%を超えておりSVBとは構造が異なっているものの、10年に及ぶ金融緩和政策によって、金利引上げに対する日本の金融システムの脆弱性は確実に高まっています。本年4月に日銀の総裁が変わり異次元緩和の出口を模索すると言われていますが、日本において金利引上げを進めるのは非常にハードルが高い状況であり、当面大幅な利上げはないものと見ています。

*1 預貸率:銀行の預金に対する貸出金(融資)の比率を示す数値であり、「貸出金÷預金×100(%)」で計算。
*2 東京商工リサーチの調査によると、日本国内106銀行の2022年9月中間期の預貸率(中央値)は74.2%。
*3債券価格と金利は逆の動きをするシーソーの関係。金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上昇。
*4 なお、日本国債の最大の保有者は日銀であります。日本経済新聞(2023年3月18日付)によりますと、日銀が保有する国債の含み損は2022年9月:▲0.9兆円から2022年12月時点:▲9兆円と、実に10倍に拡大している。