居住権を主張された相続建物を処分した例

2024.03.22

1.事例の概要

相談者は、自身で使用しない建物(本件建物)を相続。本件建物には占有権限を主張して住み着いていた人物(占有者)がおり、その占有者の背後には、占有者をけしかけて相談者に負担を押し付けていた関係者がいました。相談者は本件建物を処分しようと数々の買取業者を当たりましたが、買取業者からは、占有者さえいなければそれなりの金額で買い取れるが、現状有姿での引き渡しであれば、むしろ多額の費用を支払ってもらう必要がある、と言われました。このように、占有者の立退きに時間、費用及び労力がかかることを嫌がられ、売却はおろか、無償譲渡でさえも断られてしまい、困っていました。

2.ARCによる提案内容

相談者としては一刻も早く解決したいが裁判になると占有者やその関係者からの激しい抵抗により長期化が予想されること、また、本件建物を今すぐに売却できないのであれば占有者からある程度の費用を回収したいとの希望があったことから、以下2点を提案。仮にどちらかが不調に終わっても問題解決できるようにしました。

①占有者と短期の定期借家契約を結ぶこと

②占有者の関係者に本件建物を無償譲渡すること

3.解決内容

上記ARCによる提案を受け、相談者は占有者と短期の定期借家契約を締結。本件建物を売却するまではある程度の費用回収もでき、契約終了後は必ず退去させ速やかに売却できる対策を取りました。その上で、最終的には占有者の関係者に本件建物を無事に無償譲渡でき、争いの種を手放しました。

4.本件を担当したARCメンバーより

本件では、被相続人による遺言作成や生前贈与などの対策を取っておけば、相談者はこのような紛争に巻き込まれずに済んでいたと言えます。また、相談者としても、相続時に相続放棄をしていれば良かったが、当時は知らなかったと後悔されています。

更に、今回は詳細に触れませんでしたが、本件では行政法による規制も絡み、上記2②の無償譲渡の際にも複雑な手続きが発生してしまいました。この点に関しても、被相続人の生前時に対応しておくべきだったと言えます。

早い段階でご相談いただければ、色々な選択肢をご提案することが可能です。また、紛争発生後でも、ご依頼者様にとって最善の方法を考え、提案いたします。

担当メンバー 今西陽子
青山REAX法律事務所代表/弁護士
 
兵庫県出身。企業法務系法律事務所や一般民事を主に取り扱う法律事務所に所属後、青山REAXグループに参画。不動産取引に係る法律問題を中心として、企業法務、債務整理事件などを取り扱う。京都大学農学部卒、京都大学法科大学院修了。

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